STEP02で見た通り、月利3%でも引き出してしまえば10年で約4.6倍止まり。逆に引き出さずに置き続けると、同じ月利でも10年で約34.7倍に届きます。差は約7.5倍。月利の差ではなく、扱い方の差で、ここまで景色が変わります。
ここで多くの人がぶつかるのが、「34.7倍」が現実味を帯びないこと。数字は読めても、自分の元本にあてはめた図が頭に浮かばない。だからまず、この章では複利の数字の中身を自分の元本サイズで一度ちゃんと見ていきます。
ふくり博士
数字の意味を「他人事」のままにしておくと、複利は永遠に他人の話で終わるぞ。 最初の1回だけでよい。自分の元本×自分の月利×自分の年数で、 電卓を叩いてみるんじゃ。話はそこからじゃな。
月利3%×10年で約35倍、の中身
まず、ベースになる前提を置きます。
- 元本:100万円
- 月利:3%(一定で継続)
- 期間:10年(120ヶ月)
- 引き出し:なし(毎月の利益は元本にそのまま乗せる)
この条件で、節目の年数ごとの資産倍率を出すとこうなります(月利が一定で継続した場合の試算。実際の運用成績を保証するものではありません)。
| 経過年数 | 計算式 | 倍率 | 100万円 → |
|---|---|---|---|
| 1年 | 1.03 ^ 12 | 約1.43倍 | 約143万円 |
| 3年 | 1.03 ^ 36 | 約2.90倍 | 約290万円 |
| 5年 | 1.03 ^ 60 | 約5.89倍 | 約589万円 |
| 7年 | 1.03 ^ 84 | 約12.5倍 | 約1,250万円 |
| 10年 | 1.03 ^ 120 | 約34.7倍 | 約3,470万円 |
注目すべきは、前半と後半でスピードが違うこと。1年で1.43倍、3年で2.9倍、5年で5.89倍まではゆるやかな伸び。ところが7年で12.5倍、10年で34.7倍へと、後半に向かって急加速します。これが複利の本性です。
複利は「後半で立ち上がる」のが本質
数字をそのまま曲線で見るとこうなります。
月利3%を10年。前半は地味、後半で一気に立ち上がる。これが複利曲線の本性で、途中で降りた人には届かない。
注目は、5年目あたりまで地味に見えるカーブ。1年で約1.4倍、3年で約3倍、5年で約6倍。「もっと伸びてもいいのでは」と感じるくらいの傾きです。けれどここで降りずに続けると、7年で約12.5倍、10年で約34.7倍と、直前の倍数を倍々で塗り替えていくような立ち上がりに切り替わります。
複利が難しい理由のひとつが、ここにあります。複利の伸びを実感できるのは、いちばん降りたくなる時期の後だということ。前半の地味な傾きの間に「やっぱり手法を変えよう」「もっと月利の高い手法を探そう」と動いてしまうと、ちょうどカーブが立ち上がる直前で離脱することになります。
だからこのサイトでは、後半の急加速の存在を最初に頭に入れておくことを推しています。地味な前半を耐えるのは、後半の傾きに乗るための助走だ、という前提があるかないかで、続けられる確率がまったく変わります。
ふくり博士
この曲線、わしも最初は信じておらんかった。 「数字遊びじゃないのか」とな。 じゃが、3年・5年・7年と自分の口座の数字を当てはめていくと、 ある日ふっと「あ、そういうことか」と腑に落ちる。 そこまで来たら、もうエントリー回数は自然に減るぞ。
月利別×期間別マトリクスで、自分の数字を選ぶ
「月利3%は、自分にはまだ高い気がする」── そう感じる人は多いはず。むしろそれが正しい感覚です。月利3%を10年継続できる人は、現実にはかなり限られます。
なので、月利を1〜3%のレンジで動かしたとき、期間ごとに資産がどこまで伸びるかを並べておきます。今の自分の月利感で、期間と倍率を見比べてみてください(下表はすべて、月利が一定で継続したと仮定した場合の理論値)。
| 月利 \ 期間 | 3年 | 5年 | 7年 | 10年 |
|---|---|---|---|---|
| 1% | 約1.43倍 | 約1.82倍 | 約2.31倍 | 約3.30倍 |
| 1.5% | 約1.71倍 | 約2.44倍 | 約3.49倍 | 約5.97倍 |
| 2% | 約2.04倍 | 約3.28倍 | 約5.28倍 | 約10.77倍 |
| 2.5% | 約2.43倍 | 約4.40倍 | 約7.99倍 | 約19.36倍 |
| 3% | 約2.90倍 | 約5.89倍 | 約12.5倍 | 約34.7倍 |
このマトリクスから読み取れることは、おおむね3つ。
- 月利1%でも、10年で約3.3倍。地味に見える数字も、時間で十分に効く
- 月利が0.5%ずつ上がるごとに、10年後の倍率はおよそ2倍ずつ膨らむ
- 同じ月利でも、3年と10年では別物。継続年数の違いが最大の変数
ここで多くの人が見落としがちなのが、3つ目。「月利を上げる方向」にばかり関心が向きがちですが、複利の威力は続いた期間そのものから出てきます。月利1%でも10年回せる人は、月利3%を1年で潰してしまう人より、結果的に大きな差で先に進みます。
実際の数字は、シンプル複利計算機に自分の元本・月利・期間を入れて確認してください。マトリクスの行間にある自分の数字を入れたとき、どこに着地するかが見えます。
月利3%は、現実的な数字なのか
ここまで月利3%を主役で扱ってきましたが、正直に書いておきます。月利3%を10年継続できる人は、ごく限られます。
参考までに、いくつかの目線を置いておきます(あくまで参考値で、絶対基準ではありません)。
- 月利1%:FXを長く続けている層が、長期で目指せるかどうか、というレンジ
- 月利2〜3%:プロップトレーダーや専業層の目線。1〜2年単位で出す人はいるが、10年継続は別の難易度
- 月利5%以上:短期では実現する人もいるが、長期継続を前提にした目標としては現実的でない
ポイントは、月利が高くなるほど継続の難易度が跳ね上がること。月利を欲張ると、一発の損切り無視・ナンピン・ロット過多で口座を飛ばしやすくなり、複利の継続性そのものが壊れます(この話はSTEP04で扱います)。
なので、現実的な構え方はこうなります。
目指すのは「高い月利」ではなく「壊れない月利」
月利3%は「複利の力を見せるための例題」として優秀ですが、自分の運用設計に持ち込むときは、月利1〜2%を10年回せる前提で組むほうが、結果的に長く積み上がります。月利が低くても、複利の曲線そのものは同じ形。前半が地味で、後半で立ち上がる性質は、月利1%でもちゃんと機能します。
ふくり博士
月利を上げる選択は、たいてい複利を縮める選択になる。 月利2%で10年と、月利5%で2年。同じ「努力した」感じでも、 着地はまったく別の場所じゃ。 低めの月利で長く回す方が、最後はだいぶ前に出るぞ。
複利運用との関係
「月利3%が10年で約35倍」── この数字は、夢を見せるための数字ではなく、構造を見せるための数字として置いてあります。重要なのは35倍そのものではなく、同じ月利でも、引き出さずに置き続けるとここまで形が変わるという事実のほう。
ここまでのSTEP01・STEP02・本STEP03で、複利の3つの前提が揃いました。
- 稼ぐ=長期で資産を育てる行為(STEP01)
- 単利では、その目的地には届かない(STEP02)
- 複利は前半地味・後半急加速で、月利1〜3%でも長く続ければ十分機能する(STEP03)
ここまで来ると、自然と次の問いが出てきます。
「では、その曲線はどこで壊れるのか?」
複利は強い仕組みですが、続いている限りでしか効かないという弱点があります。1回の致命傷で資金が大きく削れた瞬間、35倍の未来は曲線ごと壊れる。次のSTEPでは、その「壊れる瞬間」を扱います。
次のSTEP
次は STEP 04 ─ 複利は、1回のルール破りで終わる。35倍に届くはずの未来が、なぜ1回の損切り無視・ナンピン・許容損失オーバーで一瞬にして壊れるのか。複利を壊す側のメカニズムを整理します。
STEP 04 複利は、1回のルール破りで終わる